1. 為替と株価の関係
海外資産、特にS&P500やオルカン(全世界株式インデックス)などに投資する際、日本円で生活している私たちにとって重要なのが「為替変動の影響」です。たとえ株価が上昇していても、円高が進行すると、円換算でのリターンは目減りします。逆に、円安が進めばリターンが膨らみます。
為替と投資リターンの関係
- 円高:1ドル=150円から100円に変動 → 同じ100ドルの利益が15,000円→10,000円に減少
- 円安:1ドル=100円から150円に変動 → 同じ100ドルの利益が10,000円→15,000円に増加
このように、為替の変動は外貨建て資産の価値に直接影響します。
2. 為替の変動が投資リターンに与える例
円安の場合:
- 海外資産の円換算価値が上昇し、見かけ上のリターンが増える
- 為替差益によって株価下落を相殺できることも
円高の場合:
- 海外資産の円換算価値が減少し、リターンが圧迫される
- 含み益が減る、あるいはマイナスに転じる可能性も
3. 年金運用組織(GPIF)などの見解
日本最大の機関投資家であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、為替の影響について次のように述べています:
- 短期的には為替の影響は大きい
- しかし長期的には円高・円安のサイクルが繰り返されるため、リターンへの影響は相殺されやすい
- 従って、長期投資では為替に対して過度に神経質になる必要はない
これは多くのプロの運用機関に共通する見解であり、長期投資家にとって心強い指針と言えるでしょう。
4. コロナショック時の為替と株価の関係
2020年春のコロナショックでは、米国株(S&P500)やオルカンは大きく値を下げました。しかし、実際の日本国内の投資信託(円建て)の基準価額の下落は、現地通貨ベースの下落ほど大きくありませんでした。その理由の一つが「円安」です。
円安の影響
- 当時、1ドルあたり約40円の円安が進行
- 株価の下落幅(例:S&P500が20%下落)を為替差益が打ち消した
- 結果として、円建ての基準価額は10%前後の下落にとどまった事例も多い
このように、為替はポートフォリオ全体の値動きに対して強い影響力を持ちます。
5. 今後の見通し:FRBの利下げ・日銀の利上げと為替相場
2025年にはFRB(米連邦準備制度)が複数回の利下げを示唆しており、逆に日銀は徐々に利上げを進める姿勢を示しています。これにより、日米金利差が縮小し、ドル安・円高が進む可能性が高まっています。
為替の動向
- 現在:1ドル=150円近辺
- 今後の予想:1ドル=135円台まで円高が進む可能性
これは、海外資産を保有する日本人投資家にとっては、為替差損のリスクを示唆します。
6. トランプ政権と米中関税戦争の影響
トランプ前大統領が再び関税政策を強化する動きを見せており、中国製品に最大145%の高関税を課しています。一方で、最近は「関税の大幅な引き下げ」も示唆しており、交渉の柔軟化が期待されています。
関税の現状と見通し
- 高関税の維持は経済的に大きなマイナス
- 双方が報復関税を行うことで世界経済にも悪影響
- 市場関係者は「長期的な高関税の維持は現実的ではない」との見方
- 最終的には、妥協や段階的な関税引き下げの方向に進む可能性
7. 為替・金利・地政学リスクの3点セットで考える必要性
現代の投資環境では、以下の3要素が密接に絡み合っています:
- 為替変動(円高・円安)
- 金利政策(利上げ・利下げ)
- 地政学リスク(米中摩擦、ウクライナ情勢など)
これらは相互に作用し、資産価格の変動に大きな影響を与えます。
8. まとめ
- 為替は短期的には投資リターンに強く影響するが、長期的には平均化される傾向
- コロナショック時は円安が株価下落を相殺した好例
- 2025年はFRBの利下げと日銀の利上げで円高が進む可能性があり、海外資産保有者にとって為替差損リスクが高まる
- 米中の関税交渉は不透明だが、経済合理性から妥協に向かう可能性が高い
為替の動向に一喜一憂せず、長期的な視点を持って海外資産を保有することが、これからの時代における資産形成の鍵となるでしょう。
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